産業カウンセラーは、働く人たちが抱える問題の解決に向けて、心理学的手法を用いてその援助を行う、職場におけるカウンセラーです。
上司や同僚との関係、進行中のプロジェクトへの不安、その他不満や悩みなど、様々な問題を抱えている働く人たちにしっかりと向き合い、アドバイスなどを通して改善に導きます。
この記事ではそんな産業カウンセラーについて、資格試験の難易度や年収、さらには具体的な仕事内容まで徹底的に解説していきます!
産業カウンセラーについて
産業カウンセラーは一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する民間資格です。
日本産業カウンセラー協会が認定する資格には、産業カウンセラー以外にも、その上位資格であるシニア産業カウンセラーや、国家資格であるキャリアコンサルタントがあります。
産業カウンセラーの仕事内容
産業カウンセラーの活動領域は、労働環境の中で人間関係などから生じるストレスや心の問題に対するカウンセリングや、産業社会におけるキャリア設計やそれに対応する能力開発の支援、また産業場面における人間関係や職場環境の改善の支援など、大きく3つに分けられます。
メンタルヘルス対策への援助
企業などで働く人たちは、日々様々なストレスを抱えています。
それはプロジェクトの進捗状況や達成しなければならないノルマなど、様々な要因があります。
しかしそのようなストレスは知らず知らずのうちに心身に重大な影響を及ぼし、仕事の生産性の低下を招くことがあります。
働く人にストレスを極力与えないように企業など組織側のコントロールをする必要があり、また個人側にはストレスに対する予防やコントロール方法について助言・援助をしなければなりません。
産業カウンセラーは、そのような企業などでのメンタルヘルス対策の維持・改善に貢献しています。
キャリア開発への援助
労働環境や労働者の就業意識が激しく変化している中で、労働者のよりよいキャリア設計の支援は必須となってきています。
そんな中で、キャリアコンサルタントだけでなく産業カウンセラーも近年キャリアカウンセリング分野を開拓しており、労働者のよりよい職業生活(Quality of Life)実現のために貢献しています。
職場における人間関係開発への援助
よりよい職場環境作り、職場での円滑な人間関係を築くために、個々人のソーシャルスキルやリーダーシップ、コミュニケーションスキルなどを指導・援助することも産業カウンセラーの重要な仕事です。
このような人間関係育成のためのアプローチは、職場で発生する問題や働く人のストレスの要因への、予防的な対策となります。
産業カウンセラーの年収
産業カウンセラーの平均年収は350万円前後と言われています。
ただし、雇用形態や勤務する企業の規模などによって異なります。
一般の民間企業や医療機関、そして公的機関で正社員として勤務する場合収入は安定しており、大企業の人事部などで働くことができれば役職などにもよりますが年収500万円以上も見込めます。
非常勤やパートタイマーとして働く場合、時給は1,500円~1,800円程度です。
ただし、産業カウンセラーの場合は特に個人の能力や経験が重視されるため、それに応じて時給は上下します。
また非常勤の場合、正社員のような安定した収入は見込めないため、いくつかの職場を掛け持ちしながら働く方も多いです。
産業カウンセラーのなかには、独立開業する方もいます。
産業カウンセラーとして独立開業する方は少ないのが現状で、集客が難しく顧客がつきにくいというのが現状なようです。
しかし、豊富な経験や知識を積むことや、ダブルライセンスなどで専門性を高めることなどで差別化することができれば、成功する確率は高くなるでしょう。
産業カウンセラーになるには
産業カウンセラーになるためには資格試験(実技試験・学科試験)に合格し、日本産業カウンセラー協会の会員に登録する必要があるのですが、試験を受験するために受験資格満たさなければなりません。
受験資格は以下の2つです。
①大学院で心理学や心理学に関連する専攻を修了し、一定の科目の単位を取得
ここでいう心理学に関連する専攻は、心理学又は心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかの名称を冠する専攻のことを言います。
また、単位を取得しなければならない科目は以下の通りです。
A群:産業カウンセリング、カウンセリング、臨床心理学、心理療法各論
(精神分析・行動療法など)などの科目群
B群:カウンセリング演習、カウンセリング実習などの科目群
C群:人格心理学、心理アセスメント法などの科目群
D群:キャリア・カウンセリング、キャリア概論などの科目群
E群:産業心理学、産業・組織心理学、グループダイナミックス、人間関係論などの科目群
F群:労働法令の科目群
G群:精神医学、精神保健、精神衛生、心身医学、ストレス学、職場のメンタルヘルス などの科目
A群からG群までの科目の中で1科目を2単位として、10科目以上20単位以上の取得が必要です。
ただし、D群からG群の科目による取得単位は、6単位以内とされています。
②日本産業カウンセラー協会が行う産業カウンセラー養成講座の修了
成年に達しており、日本産業カウンセラー協会が主催する産業カウンセリングの学識および技能を修得するための養成講座を修了した場合、受験資格を得ることができます。
試験の難易度
産業カウンセラーの試験は、日本産業カウンセラー協会が主催しており年に1回行われます。
試験は学科試験と実技試験に分かれています。
学科試験と実技試験の合格率の推移
以下、学科試験と実技試験の直近3年間における合格率の推移です。
学科試験
実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2020年 | 1,959 | 1,323 | 67.5% |
2019年 | 2,788 | 1,936 | 69.4% |
2018年 | 3,289 | 2,368 | 72% |
実技試験
実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2020年 | 754 | 546 | 72.4% |
2019年 | 1,122 | 746 | 66.5% |
2018年 | 1,342 | 905 | 67.4% |
学科試験も実技試験も合格率は例年60%~70%であり、合格率自体は高いのですが、受験者の全員が大学院で心理学について専門的に学んだ方や、養成講座を修了した方ですので、その中で合格するにはしっかりと試験対策を行う必要があります。
免除制度について
産業カウンセラー試験には免除制度がありまので紹介しておきます。
免除の条件や有効期間をぜひ知っておいてください。
- 学科試験に合格したにも関わらず実務試験が不合格だった場合は、翌年度と翌々年度の試験において学科試験が免除されます。
- 実技試験に合格して学科試験に不合格だった場合は、翌年度と翌々年度の実技試験が免除されます。
- 産業カウンセラー養成講座受講者で、講座内の「面接の体験学習」で一定の基準に達していると評価された場合、実技試験が免除されます。
産業カウンセラーの取得がおすすめの方
企業の人事部や管理職の方
産業カウンセラーは働く人たちが抱える問題の解決に向けて、心理学的手法を用いてその援助を行うカウンセラーです。
メンタルヘルス対策を進める企業で人事部や管理職に就いている方は、産業カウンセラーの資格を大いに役立てることができるでしょう。
傾聴のスキルを身につけたい方
人の話を真摯に聴くことは、信頼を得ることができ、好ましい成果にもつながるため、コミュニケーションにおいて非常に重要です。
産業カウンセラーの養成講座を通して傾聴のスキルを身につけることができますので、特にビジネスの場において役立てることができるでしょう。
産業カウンセラーのまとめ
産業カウンセラーは働く人たちが抱える問題を解決するために、心理学的手法を用いてその援助を行う、職場におけるカウンセラーです。
その他にもキャリア開発の援助、働きやすい職場環境を作ることや良好な人間関係を築くことも産業カウンセラーの重要な活動です。
企業の人事部や管理職に就く方や心理学に興味がある方、またカウンセリングのスキルを身につけたい方などは、産業カウンセラーの取得を前向きに検討してみましょう!